看板のはじまり
日本における看板の歴史は古く、平安時代にまでさかのぼります。
当時から商品を売るための宣伝道具の役割を担っていたのですが、取扱商品をそのまま店頭に並べることで何のお店なのかを通行人に伝えるスタイルで、今でいう「サンプル」に近く今の看板のイメージとはかけ離れたものでした。
以降江戸時代にいたるまで、サンプルや商品をかたどった模型などを用いることで業種や商品で表現していたのですが、ビジュアル的手法を用いた模型看板が主流となっていた背景には、当時の識字率の低さがあるといわれています。
江戸時代の看板の特徴
江戸時代に入り武士は公共機関で、庶民は寺子屋で読み書きを学ぶ機会を得ると、屋号や商品名を文字で表現した私たちのイメージに近い看板が登場します。
江戸時代中期以降は、浮世絵に代表される元禄文化の発展に伴い凝ったデザインのものや、見た目重視で華やかな色彩の看板が多く存在するように。大金をかけた華美なものが少なくなかったため、幕府はより質素なものにするよう禁令を出したほどだったそうです。
SNSのない時代の役割
看板はすでに江戸時代には屋内用、屋外用と用途が分かれていて、特に屋外用看板は現代のような広告媒体のない時代に大きな役割を担っていました。
中でもお店の軒先に吊るされた看板は古ければ古いほど良いとされ、お店選びの目安に。
また夜間営業をメインに行っている場合は行灯や提灯を用いた看板を掲げていたそうで、今でいう電飾看板のルーツがここにあるようです。
明治時代以降
明治時代以降は製造技術の発展によりこれまでの紙や木材からホーローが主素材になる一方、海外諸国からの文化流入によりローマ字表記やイラストが導入されデザインがより洗練されていきます。このように看板製作の技法が一気に発展し、今のものにより近い看板が町中に溢れることとなります。
看板の価値
看板の歴史を紐解いていくと当時の社会情勢や文化の影響を大きく受けていることがわかり、その存在に歴史と重みを覚えます。また実際に古い看板を見ると、精緻を極めた細工や美しいデザインが目を楽しませてくれ、広告塔としての役割を超えた芸術的価値の高さを改めて実感。歴史を知ることで、新たな側面や魅力と出会うきっかけとなるかもしれません。